| トホホな店1 |
「なんなの!ったくもう!」と思わず、ゲッ!トホホ。となる店が世の中に多いのか、
それとも、私の「店運」が悪いのか、
あまり外出しないのに、
ここ2カ月くらいで、2軒あたってしまった。
一軒目紹介。
住んでる町の日本酒居酒屋。
JPと、なんとなく「入ってみるかー」と軽い気持ちで
入ったのが失敗だった。
地上にある、メニューをみて、
地下に降りていくと、なんとなく、空気がよどんでいた。
二軒あるうちの右側の方らしい。
戸は日本酒の銘柄のシールがびっしりと貼ってあり、
中が見えない。
意を決して戸を開けるとお客さんナシ。
カウンターで、
大柄のおじさんが何やら電卓で計算している。
何か空気がさらに、どよーんと重く、
会話するにもヒソヒソ話をしなくてはいけない雰囲気。
ヤバ気か?と思いながら、私達はカウンターの奥に座った。
「この店早く出たい」
と思ったが、客は私達だけ。とりあえず、
何品か食べ物を頼み、チューハイをそれぞれ頼んだ。
すると、大柄のおじさんと、人のよさそうな30歳くらいの男の人は、
無言で注文したものを作り始めた。
店はしーんとしている。
私達の話す事はヒソヒソ話でも全部聞き取れるんじゃないかという位。
注文したものが揃うと、また大柄のおじさんはカウンターに座り、
電卓で計算しはじめ、
しーん。
気を遣っていてもしょうがないと腹をきめ、
普通に会話をしながら飲んだ。

チューハイがなくなったので、
「日本酒いってみよう」と、
横に並んでいる日本酒の箱に私の好きな「菊姫」の箱があったので、
人のよさそうな男の人に、
「菊姫ありますか?」
と聞くと、男の人が、
「すみません、今、置いていないんです」
と、言い終わらないうちに、大柄のおじさんの方が、
「菊姫、人気ないから置いてないんですよ」
と立ち上がった。変な威圧感はこの人からにじみでていたのか。
さらに加えて言うことには
「あんまりうまい酒じゃないなあ。菊姫っていう名前が
女の子にウけるのかねえ」
ちょっとムカッ。
改めておじさんを見ると、おやゆび姫のお話に出てくる嫌なカエルのオヤジみたいだった。
「日本酒好きなんですか」
とカエルオヤジは聞くので、ここで「好きです」と言ったら大変な事になりそうな
予感がしたので、
「まあ、好きな方です」
と言葉を濁して答えた。
濁したものの、やっぱり大変な事になった。
「わたしもねえ、若い頃からいろんな酒を飲んできたけどねえ...」
やばい、自慢ともウンチクともつかぬ演説が威圧感を伴って始まった。
面白い話ではなさそう...
ヘタな返事もできず、
「じゃあ、おすすめのお酒ください」
と言って、とりあえず「おいしい」らしいお酒を出してもらう。
確かに飲み易いが、何だかオヤジが見張ってるようで、
「おいしい」とかそういうモンダイではない。
飲んでいる間も、演説は続き、
結局、「十四代」というお酒が一番だとか、
しかも、入手困難であるとか、だけどうちの店じゃ特別に
2年間で、十何本入ったとか...。
「こう言っちゃ悪いけど、あなたたちの一生かかっても飲めないいい酒は
世の中にたくさんあるんですよ」とか。
別に日本酒フリークじゃないんですよーっ!
飲めない酒があってもいっこうにかまいませーん!
心で叫びながら、適当に頷くしかなかった。
おとなしく聞いていたら、月一回の店で行うという試飲会の
お知らせが始まった。
どうも、普通の店の営業で栓を開けた日本酒を全部2時間、飲み放題にするらしい。
あと、「十四代」とやらが入ったら、それも飲めるらしい。
「7000円じゃはっきりいって、安いですよ」
ときて、
「今月はもう、3回やりましたけどね」
だって。
「日本酒は栓を開けたときから味が変わるんですよ。うちは試飲会があるから、
いつも新しい酒を出せるんです」
って、試飲会とは残り物整理の会なのか?
月3回ぶんも余っちゃったのね...
「この店に2回、3回と通ってもらえば、分かってもらえます」
相変わらずの威圧感でカエルオヤジは宣伝していた。
わかりたくなーい!もういやあーー!
もう、頷くのも止めた。
今度はJPに向かって、
「お酒は何がお好きなんですか」
と聞いた。
「ハア、リキュールとか、ですねえ」
と言うか言わないかのうちに
「リキュールはダメだ」
ときたよ。
このオヤジ、必ず人の意見をイキナリ否定する癖があるみたい。
「若いうちはいいけどねえ、年とってくると、リキュールはツケがまわって、腹が出るよ」
って、人の事心配できるおなかか?ツッコみたくなる。
JPは苦笑いしている。
話を聞いているうちに、頼んだお酒は飲み終わり、
何を注文しても何か言われそうだし、
それより、早くこの店から抜け出したく、
JPも同様らしかったので、
お勘定をしてもらい、逃げるようにして店を出た。
シールのびっしり貼ってある戸を閉め、
地上に上がると、ようやく自由な気分になり、
二人で激しい文句大会となった。
結論は、
「まずい酒でも、楽しく飲みたいよねえ」
という事だった。
この町にこんなトホホな店があったとは...
まったく、トホホ。
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