. 新しい扉
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2005/4/12 Tue
新しい扉

妊娠中、出産とはどんなものか、
どれ位、痛いのか、
全く想像もできないでいました。
そりゃあ、情報化社会ですから、
いろんな情報は入ってましたし、
調べる事だってできました。
でも、実感が湧くどころか、
他人事にしか感じられない自分がいました。

自分が産むという現実味が全くない状態で
陣痛が始まりました。
私が得た情報によると
目安では12時間程で産まれるはずでした。
しかし、12時間経っても、24時間経っても産まれません。
自然にお産をする助産院でしたから、
もちろん早く産ませるような注射などはうちません。
代わりに階段の昇降とおにぎりです。
陣痛で痛い上に、スポ根です。
それが、促進剤なのです。

助産士の先生に
「あのう、水中出産希望してるんですけどー」
と申し出てみました。
この助産院を選んだのも
水中出産ができる所だったからです。
イルカの出産を見て以来、
ヒトも水中出産が自然だろうと思っていたのです。
先生は
「あのねー何でもかんでも水中出産がいいって訳じゃないのよー」
とおっしゃいます。
どうやら微弱陣痛な私には
水中は向いていないだろうとの事でした。
しかたなく陸上フリースタイル(競技?!)
アクティブバース(とかいったっけっかな?)で
産む事になりました。
分娩台の上で固定されて産むんではなく、
何かにぶらさがってもよし、座ってもよし、
好きな体勢で産んでよいのです。
水中出産希望者だった私は若干不服ではありましたが、
しかたありません。

さて、ちっとも産まれる気配はありません。
ツボの刺激や、何か自然派な秘薬のようなもの、
いろいろ試してもダメです。
リラックスしてないんじゃないかということで、
なんということでしょう!
ワインが出てきました。
妊娠してから禁酒をしていたエライ私です。
助産士さんが
「飲んでもOK」とおっしゃってくれているのです。
砂漠でいきだおれそうになった時に見えたオアシス。
グラスに注がれたワインが輝いてみえます。
痛いのも忘れて笑顔でたくさん流し込みました。
が、産まれる様子はありませんでした。。

助産士さんによると
へその緒が赤ちゃんの首にからんでいると
ゆっくり出てくる
との事でした。
陣痛の合間に何度も階段を昇り降りし、
途中に飾ってあるピカソの授乳している母子の絵を
何度も見るたびに、
「早くこんな風になりたいようう〜〜早く楽になりたい〜〜」
と心から願うのでした。

痛い辛い時間が永遠に続くかと思われましたが、
やっと陣痛から3日目の昼前に産まれました。
痛いの痛くないのって、もうなんだかよく覚えてません。
産む時には脳内麻薬が出るらしいです。
ただ、産む少し前からは
猛獣のような叫び声をあげ続けていました。
演劇部に余裕で入れそうな腹からの太い声です。
自分でもびっくりしていました。
我を忘れる位の状態にならないと生まれないと
親子学級で先生がおっしゃっていたのを思い出しました。
おそらく痛かったんでしょう。
もうよく覚えていません。
脳内麻薬のおかげか
ただぼうっとしてました。
JPも一緒になって産んでくれました。
感謝しています。
陣痛が来てから
およそ82時間後です。とほほ。

が、せっかく産まれた赤ちゃんは紫色で、
産声をあげませんでした。
やはりへその緒がからんでいたのです。
何でも二回巻き付いたあげく、
たすきがけになっていたようで。
へその緒が普通より長かったらしいです。
私はぼうっとし続けていました。
そして、紫色で出てきた赤ちゃんをみて、
「男の子だったんだ!」
「あ、夢と同じ」
などと思っていました。
少し前に
赤ちゃんが紫色で横たわっている
そんな変な夢を見ていたのです。

助産士の先生はすばやい動きで、
赤ちゃんの口の中のものを吸引し、
酸素ボンベを口に当てました。
紫色の体が赤みを帯びてようやく
泣き声を聞く事ができました。
その声で私は初めて涙が出ました。
でもちょっとだけ。
もっと号泣するかと思っていましたが。
テレビで誰かの出産を見ていた方が
もっと泣けます。

とりあえず、無事に出産は終わりました。
水中出産をしたいという私に
親は非常に心配していましたが
説得してここで産んで
本当によかったと思っています
(結局水中では産めませんでしたが・・)。
あ、そうそう病院で産むとほとんどの場合
会陰切開という恐ろしい事を行うのですけれど
自然なお産ではゆっくりと産むので会陰は
産むのにふさわしい柔らかさになる為
切開する必要がないという事らしいです。
それも私が助産院を選んだ大きなポイントでした。
実際、本当に必要無く、ちょっと切れたところは
クリップで止めて翌日にはそれもとれました。
誰か曰く、
「骨付きカルビ肉をはさみで切る音」
とは遭遇しないですみました。

しかし人間から人間が出てくる不思議さ。
この瞬間を境に新しい扉がバーン!と
開きました。
もう後ろには戻れない、重要な大きな扉が。

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