[ある休日の日の出来事] あるところに。 一つの一家がありました。 二人は結婚は出来ないけれども、新婚さながら仲睦まじく、幸せに暮らしていました。 ただ唯一の問題点は。 奥様の人気が、尋常ではなかったということでしょうか。 そんな一家の、ある日のちょっとした騒動のオハナシ。 +++++++++ 「はっっっにーっ!!」 中に住人が居たため、鍵は当然かかっていなかった。 ばたむ、と扉が開き、金色の犬が飛び込んでくる。 「ハニーッ!会いたかったよハニーーーーッ!」 「な、成瀬・・・さん。お、はよう、ございます・・・」 ぎゅうぎゅうと抱きしめられ、啓太が助けを求めるように手を差し出した。 そんな啓太を放り、ドアが結構静かに、音を立てずに閉まっていく。 中々盛り上がりに欠けるドアだ。 「成瀬さん!!いい加減にしてください!啓太が困ってるじゃないですかっ」 「ん、何だ。遠藤、居たの」 「居たに決まってるじゃないですか!!ずっと居ました! 成瀬さんが来るずーーーっと前からここにいました!!」 まだ9時なのにいつの間にか啓太の家に来ていた和希が怒鳴り始めた。 5分前でも『ずっと』とになる和希に啓太が苦笑いを送る。 「ね、ハニー。僕、ハニーのために頑張ったんだよ」 「あ、そうだ。成瀬さん、優勝おめでとうございます」 にっこりと啓太が微笑む。 この笑顔をみるだけの、そのためだけに、成瀬は頑張ったのだ。 海外の有名テニスプレイヤーを倒し、メダルの授賞式が終わって一番の飛行機に乗り、 家にも帰らず直でここに来た甲斐があった。 戦況報告も何もしていないのに知っていたということは、 やっぱりやっぱり、見ててくれたんだよね、ハニーの為に頑張った僕の勇士を。 「はっっにーーーーーーッッvvv可愛い!可愛すぎるよーっっっ!」 「うわぁっ」 感極まった成瀬がまた啓太に抱きつき、和希がそれを引き剥がし言い争いに発展する。 どうしようかと啓太がため息をつくと、 不意にチャイムが鳴った。 インターホンを取れば、画面に現れた見知った顔に、啓太の頬が緩む。 「今開けますね〜」 エレベーターがここに上ってくる暫くの時間を待てば、もう一度チャイムが鳴る。 未だ昔と変わらないノリで言い争いを続けている二人は放り、 啓太は玄関に向かった。 「いらっしゃい!岩井さん、篠宮さん・・・・と、中嶋さんたちも」 「俺はオマケか」 「・・・・・・・・・・・・・俺もな」 ぽん、と、名前すら呼ばれなかった丹羽が中嶋の肩に手を置くが、軽く払われる。 「ああ・・下に居たんだ。こいつらも伊藤に用事があるらしいから、連れて来た。 その・・構わなかっただろうか?」 「あ、はい!全然いいですよ。それにしても・・どうしたんですか、お揃いで」 「俺達の方はいつもの奴だ。・・卓人」 ぽん、と篠宮が背中を叩くのにあわせ、岩井の頬がそっと緩む。 「あ、また個展開くんですか?凄いじゃないですか!」 「毎月毎月・・・よくやるなぁ、お前も・・・」 「ああ・・・。その、俺は啓太のおかげでここまで出来たから・・・。 ・・・時間が開いたら、で、いいんだ。来てくれたら、嬉しい」 「丹羽。茶化すな」 「そんな・・。岩井さんの実力ですよ。是非行かせてもらいます」 「べっつにそーゆーつもりじゃねーよ」 見事に二対の会話が成立したもんである。 静かにしていた中嶋が、つい感心してしまった。 全く、器用な奴等だ。 「・・・まぁ良い。啓太」 腕を組んで静かにしていた中嶋が、会話が途切れた辺りを見計らい啓太に話しかける。 「とりあえず家に入れろ。俺達は近くに来たから寄っただけだ」 「おおー。そうだそうだ。土産もあるぞ」 とりあえず、といった感じでスーツを着た丹羽が、袋の音をさせて近くのコンビニの袋を上げる。 「え、あ、はい。すいません。どうぞ」 そういえば玄関で話していたことに気づき、啓太が人が入れるスペースを作る。 「大体成瀬さんは啓太にひっつきすぎなんですよ!!」 「・・・なんだ・・?」 「君ほど過保護じゃないけどね!毎日毎日ハニーにひっついて・・」 「・・まさかっ」 「あ・・・成瀬さん達いるから五月蝿いかもしれないですけど――・・」 「啓太・・。・・・ちょっと、遅かったかもな」 篠宮に啓太が注意をする前もなく、篠宮がスリッパをつっかけて歩いていってしまう。 ぽん、と丹羽が啓太の肩を叩く。 「お前達は!!人の家でまでそういうことをしているのかっ!?」 「げっ!篠宮さん・・・」 「遠藤、『げ』とは何だ!成瀬もだ。二人とも、そこに直れ!!」 人ン家で説教始めるのも同じだよなぁとぽりぽりと頭をかきながら、 丹羽は啓太に袋を渡す。 「こんなに人間がいるとは思わなかったから、ちょっと少ないかもしれないがな」 「あ、全然。有難うございます」 「お前の旦那の口には会わないだろうが、お前なら好きだろう?」 「もう、中嶋さん。そんなこと言わないでください。 あの人は・・・まぁ、食べないかもしれないですけど」 ポテトチップスやチョコレート、クッキーにポッキー。 コンビニお菓子の定番達が入っている袋に啓太が頬を緩めてお皿を用意した。 「それにしても、お前はエプロンもしてないのか」 「・・・中嶋さん・・・」 「普通の格好だな。つまらん」 「俺がどんな格好したら面白いんですか・・・。もう」 「・・・それで。旦那はどうした」 「旦那旦那連呼しないでください、中嶋さん。 別に籍を入れてるわけじゃないんですから・・」 相思相愛で同棲してりゃ同じことだろうと喉まででかかったが、 それを言うのは悔しいのでやめておいた。 その代わり皿にお菓子類をあけていた啓太の顎を掴み、こちらを向かせる。 「あんなんじゃ満足できないんだろう? 代わりに、俺の下に来るか。満足させてやるぞ・・・?」 「・・・結構です」 単にからかっていただけなのだろう、啓太がため息をつくと『つまらん』と簡単に開放した。 「中嶋さん。冷蔵庫漁ってもビールもお酒もありませんよ」 「そうだな・・・。あいつの好みはワインか」 「まぁ・・・ワインならないことはないですけど・・。 ・・・でも、皆でがぶがぶ飲む系じゃないですし・・・」 「お前ならカクテルの方が好きそうだけどな」 「あーもう、カクテルも好きですよ。早く向こう行っててくださいよ、準備はちゃんとしますから」 「おい、ヒデ。あんまり啓太困らすなよ。家捜ししてるみてーじゃねーか」 「家捜ししてるつもりだが?」 「冗談になりませんよ」 はい、と丹羽の手にコップを二つ。 「お水と牛乳と麦茶と烏龍茶に紅茶に緑茶。それしかありませんよ」 「やっぱ酒を買うべきだったじゃないか、哲」 「んなことしたら俺が叱られるっての!!」 あいつらに。 丹羽がその言葉を言う前に、白い手がぽんと丹羽の肩に乗せられた。 「・・・勿論ですよ。酔わせて何をする気だったんですか?」 チャイムの音も、扉が開いた音も、足音も全くさせずに。 七条が丹羽の背についた。 ぞわりと丹羽が鳥肌を立てる。 「あ、七条さん」 「啓太君?ダメじゃないですか、こんな人たちをお家に招いたら。 何が起こるかわかりませんよ?」 ちゅ、と額にキスを送られ、啓太は恥ずかいと顔を朱に染める。 「特に・・・。いつまで経っても君を狙っている不埒な輩はいるんですから」 「お前と同じにしないで貰おうか」 「おや。酔わせて啓太君に何かしようとした貴方はどんな反論が出来るんですか?」 「俺は別にそんなことは言っていないが? お前がそんなことしか考えないから、人のことまで疑り深くなるんだ」 さぁ啓太、行くか。 え?でも、七条さんと中嶋さんが――・・・。 いやいや・・・あれを止められるのは七条を止められる郁ちゃんくらいなもんだ。 はぁ・・・。でも、放っておいて良いんですか? ほっとけほっとけ。んなことよりあっちに居る岩井が心配だ。 あ、そっか・・・。 啓太の背中を押して、丹羽が脱出を図ろうとする。 当然彼等はそんなことを許してくれるような寛容な心は持っていなかったが。 「啓太君。僕は君が心配なんですよ」 「心配・・・?」 「いつでも君はみんなに笑顔を振りまいて・・・。 それ以上、君の虜を作らないでください。 君に惹かれるのは、この僕一人で十分でしょう?」 「・・・え・・・・」 わけがわからないながらに、啓太が両手をそっと包まれる。 そのまま、紫の瞳が近づいてきて――・・・。 ああ、この人ってやっぱりマツゲが長くて綺麗だな、とか、 そんなどうでも良いことを考えて、ぼーっとしてしまう。 「臣ーーーーーっ!!!」 急に甲高い叫び声が家中に響いた。 ぱちくり、と啓太が瞬きをし、七条が『残念』と呟く。 「あ、西園寺さん。お帰りな――・・・」 「啓太は私のものだ!誤解を招くような言い方をしているんじゃない!」 「案外早かったですね、郁」 つまらなさそうに呟く七条に首をかしげたら、 西園寺がネクタイを解きながら忌々しそうな声を出す。 勿論腕の中には七条から奪取した啓太が納まっている。 「スケジュールの手落ちがあるとほざいて休日出勤させただけじゃなく、 副社長であるお前が家に来るとはどういう了見だっ!?」 「僕のお仕事は、ちゃんと済ませてきたじゃないですか。 車を出して会社に郁を送り届けた挙句、帰りの車まで見つけてあげたでしょう?」 「あげたでしょう、じゃない!!」 西園寺が怒ったところで、七条には痛くも痒くもない。 子猫が毛を逆立てて鳥の雛を守っているようなこの状況は、微笑ましいだけだ。 ひょいと子猫を退け、また雛を掌に収める。 小さいということは、こういうときにも不利になりえるらしいが、 いくら西園寺とて身長を伸ばすのはちょっと不可能だったようだ。 「啓太君。こんな怒りっぽい郁ではなく、僕にしませんか?」 「え・・?」 「臣!!」 「君が望むなら、僕は何だってしますよ。 だから・・・どうかこの僕を受け入れてください」 まるで数年前、啓太が始めて七条に出会ったときのように、 手を取られ、そこに柔らかなキスが降ってくる。 ・・・・・仏人の血を引いているせいか、そういう仕草が妙に決まる男だ。 ぱくぱくと口を開け閉めしながら啓太が七条を指差していると、 ぐぃと啓太の顎がつかまれる。 「そんなつまらない奴の相手をするくらいなら、俺のところへ来いと再三言っているだろう。 聞いていなかったのか?・・・・悪い子だ」 「だ・・・ちょ、俺は――・・・・」 「中嶋!!臣も、啓太から手を放せっ!!」 郁ちゃんじゃぁちょっと分が悪いよなぁと丹羽は傍観しつつ、 啓太に手渡された麦茶を一気に飲み干す。 「そこの木偶の坊っ!」 「うわっ、郁ちゃんひでぇっ」 「役に立たないなら役に立たないなりに、少しは役に立って来い!!」 背中を全力で蹴られれば、不意打ちということもあり、丹羽がたたらを踏む。 「「「あ」」」」 はもったのは、一部始終を見ていた啓太と、丹羽を蹴った西園寺と、当事者の丹羽。 啓太を挟んで七条と言い争いを続けていた中嶋の頭上に、ぱしゃりと、軽い音が立った。 「あ・・・あ・・・え・・・えと、中嶋さん!!とりあえず、タオルーーーっ!!」 「い、いや、いい啓太!ヒデはこれからつれて帰るから!」 「で・・・でもでもっ」 「・・・哲ちゃん。これはどういうことだ?」 「水も滴るいい男じゃないか」 「郁ちゃん煽んなーーーっ」 丹羽が持っていた中嶋の分の麦茶がかかってしまったのだろう。 ぽつぽつと水滴の落ちる前髪をかきあげた中嶋の眼力が怖い。 ・・・・だけど、郁ちゃんの方がもっと怖い。 丹羽は天秤にかけ、中嶋を連れ帰ることに決めたらしい。 げに恐ろしきは恋に狂った男だ。 「ひ・・・・ヒデ。今日のうちは帰ろう。じゃあな、啓太!」 「おい、哲!」 中嶋に腕を回し引っ張っていく様を、七条がにこにこと見つめている。 「啓太。・・・・と、西園寺」 「何だ。岩井も来ていたのか」 「あ、はい。成瀬さんと和希と篠宮さんも一緒に・・・・」 「篠宮と岩井はともかく、どうして成瀬と遠藤まで居るんだ」 「・・えーと・・・・暇だったから?」 やかましさに気づいたのか、岩井が出てきた。 後ろには篠宮の声が聞こえる。 「何だか取り込み中らしいから、俺達は帰ることになった」 「え?あ、そうですか?まだ全然お話できていないのに」 「ああ・・・すまない」 腕を組みさも当然というように見ている西園寺とは対照に、啓太の眉が下がる。 「それに、俺も画廊に顔を出さないとならないし・・・」 「あ・・・そうですよね。すいません、引き止めちゃって」 「いや・・・。良いんだ。西園寺も、暇があったら来て欲しい」 「画廊か?」 「はい。岩井さんがまた開くらしくて」 先ほど岩井に渡された封筒を西園寺に渡すと、 西園寺は封筒に入った二枚のチケットを見る。 「また行くか?啓太」 「はい!行きたいです」 西園寺の問いかけに啓太が元気よく頷く。 岩井の頬がそっと緩んだ。 「それじゃぁ、俺達は行くから・・・。また」 「はい!篠宮さんも、また遊びに来てください」 「ああ。今度はゆっくり時間が取れる時にでも会おう」 「はい。是非」 にこにこと啓太が二人を見送る。 と。 ずしりと背中に重みが加わった。 「ハニーッ!ハニーと別れるなんて耐えがたいけど、ごめんね。時間が迫ってるんだ」 「時間?」 ことりと啓太が首を倒すと、成瀬がチュ、と投げキスを送りかえっていってしまう。 ・・・忙しい人だ。 「啓太。聞いてくれよ!成瀬さん、この後新聞のインタビューあるのにすっぽかしてきたらしいんだ」 「・・・でも、遠藤君も今日学園の会議が午後からあるんじゃないですか?」 「・・・・・。・・・なんで知ってんですか七条さん」 「・・・おい、和希。あんまり秘書の人たちに迷惑かけるなよ」 帰れ、と、啓太が和希の背中を押す。 「わ、おい、啓太」 「もーーー!!暇なときは来てもいいけど、暇じゃないなら学園の仕事ちゃんとやってから来いよ。 自分の仕事に責任もてない奴なんて、俺、嫌い」 「嫌ッ・・・」 「ほら、早く」 靴を無理にはかせ、ドアの外まで背中を押していく。 茫然自失の和希は、果たして仕事になるのやら。 「良いんですか?嫌い、なんて言っちゃって」 「いーんです。あいつ、そうでも言わないと仕事しないから」 きっぱりと言い切る啓太のその言葉は、ちゃんと彼のことを知っているよ、という意味で。 西園寺としては面白くない。 「・・・それで、臣」 「はい?」 「私と啓太は少々遅れたが休暇を取る。お前は会社に戻れ」 「おや。酷いですね」 「酷くない。それから、明日分も休暇申請するから受理しろ」 「・・郁?」 「私は今日も働いたんだ。明日休むのは当然だろう」 偉そうに胸を張る西園寺は確かに偉い。 七条が副社長で西園寺が社長という立場なのだから、 七条は西園寺の決定には基本的に逆らえないのだ。 「勿論、啓太君も一緒ですか?」 「当たり前だろう」 「え・・・俺もですか?」 きょとん、としている啓太に、七条から距離を取らせる。 「でも、俺は今日休んでましたよ? だから、明日は・・・・」 「私がいいといっているんだから休んでおけ」 「でも・・」 「・・・休ませるぞ」 「大人しくしてます」 折角二人きりのチャンスが出来たのに、残念。 ため息とともに呟かれた七条の言葉に西園寺が敏感に反応する。 「啓太は私のものだ。お前が手を出すな」 「そんな。人生長いんですから、まだまだチャンスはたくさんありますよ」 ふふふと笑う七条を西園寺が睨み、ドアを指差す。 「帰れ」 「ふふ。はいはい。今日のところは大人しく引き下がります」 では。 すれ違いざまに啓太の頬に口付けた七条に怒鳴るが、 七条はただ笑うだけ。 「・・・あいつの弱点を今度こそ探るしか・・・・」 「・・・でも、西園寺さんも知らない七条さんの弱点なんて、あるんですか? 七条さんのことを一番よく知ってるのは西園寺さんなのに」 「知るか!ったく・・・一番手強い奴に啓太は目をつけられて・・・」 かしかしと西園寺が自身の柔らかな髪をかく。 唯一の弱点に心当たりはあるが、それを差し出してしまえば弱点を探す意味がない。 「大体、お前は秘書であるお前が居ないままに私が仕事に出るというところに、 何の疑問を挟まなかったのか」 「・・・んだって、七条さんが言うから、そういうものなのかと思って・・・」 「臣の言うことを何でもかんでも信用するんじゃない。 啓太が納得しているということで言ったら、提出期限がまだある書類ばかり机に乗っていて・・・」 ぶつぶつと文句を言う西園寺に、啓太は苦笑いだけ。 皿に乗った小さなお菓子たちに、西園寺が気づいた。 「何だコレは」 「え?あ、それは、王様達が持ってきたんです。 何か近くに来たから寄ってくれたみたいで」 「・・・・そんなものは放っておいて良い。 全く・・。学園を卒業してからも、どうしてお前は狙われているんだ」 「どうしてって・・・」 言われても、啓太に責任はない。 西園寺のキスを甘受しながら、そんなこと言われたって・・・と心中で呟く。 「明日休んで、どうする気ですか?まだお仕事残ってるのに・・・。 会議だって、たくさん・・・・」 「・・・そうだな。岩井の個展を覗きに行くか。 会議なんて、臣一人で十分だ」 「・・・もう・・・」 付き合う前の、西園寺さんに俺が惚れてるときは、 こんな我侭な人だなんて、思いもしなかった。 いっつも優雅に笑ってて、単に綺麗な人ってだけだったのに、 中身を覗いてみれば、案外お茶目で我侭で人間っぽい。 くすくすと笑う啓太に気づいたのか、西園寺が眉をひくりと跳ね上げる。 「どうした、啓太」 「・・・いえ。俺ってやっぱ西園寺さんが好きだなって考えてたんです」 「当然だろう」 触れるだけのキスが、ゆっくり深くなっていく。 不意に、ぶると啓太の携帯電話が鳴った。 「え、あ、西園寺さん。すいません」 「・・・」 不満そうにしながらも、啓太は西園寺の腕から逃げていく。 「はい、もしもし。あ、海野先生?」 「・・・海野先生だと?」 「え、この近くに来てるんですか? 家に来る?あ、はい・・・構いません・・・けど」 「〜〜〜〜〜〜っっっ!!!」 ちらりとこちらを覗き見る啓太に、勝手にしろと言い放つ。 あるところに。 一つの一家がありました。 二人は結婚は出来ないけれども、新婚さながら仲睦まじく、幸せに暮らしていました。 ただ唯一の問題点は。 奥様の人気が、尋常ではなかったということでしょうか。 旦那様は体力がないほうなので、ライバルを追い出すだけでも必死なのです。 ・・・それでも。 二人は中々に幸せなようです。 ++++ キリ番55555hitのリクエスト。 淡桜様にささげさせていただきます。 色々とこちらに不手際がありまくりのリクエストでした。 うう・・・すいません・・・。 これに関しましては書き直しにしっかりばっちり応じさせていただきます。 ということで、新婚啓ちゃん争奪戦ということでした。 甘い新婚物で、ライバルがたくさん出てくるの。 旦那様は決められませんのでご自由に、ということで。 ・・・こんな美味しいネタ逃せるわけがないだろう、ということで。 んふふふふ〜v わかってるんです、きっと七条さんが旦那様っていうのがサイト的にもいいんだろうなって。 淡桜さまも内心それを望んでるんだろうなって。 だけど、誰でも良いといわれれば、そこはひねくれモノの高嶺ですからね。 普通にライバルを追い出せる七条さんではなく、郁様で・・vv そしたら臣さんが出て行ってくれなくて・・苦労しました。 それでも郁ちゃんには・・頑張ってもらうしか。ね。 全て淡桜様へ。 いつもいつも有難うございます。 他の方は転用禁止ですのであしからず。 |