"Love Love Love" 「賑やかだけど・・でも、何だか面白かったな」 近くの猫が入り込んできていたので膝の上に抱き上げ、 そっと背を撫でながら呟く。 珍しい金の髪。 陽の光に反射したそれは、とても綺麗だった。 柔らかな猫の毛に指を通しながら、くすりと思い出し笑い。 成瀬と一緒に居るときの和希も、随分楽しそうだった。 ああいうトモダチみたいな関係は、とても良いと思う。 少し・・・羨ましい気もする。 どちらが、とは恥ずかしすぎていえないのだが。 ほわりと頬を染めて、ふと手を止める。 「・・・そういえば・・・」 成瀬の言っていた言葉。 『啓太に手を出したら、仕事、止めさせますから』 『そしたら僕は、啓太に君の正体をバラしちゃおう』 何故成瀬の仕事を止めさせる権限があるのだろうか。 その辺りも疑問だし、成瀬の言っていた、和希の正体というのも気になる。 「・・・ん〜?」 ぐりん、と首をかしげる。 かしげたところで、わかりっこないのだが。 「・・・ぶにゃー」 猫が、撫でろと声を出す。 ・・・何度見ても可愛いんだか可愛くないんだか微妙な猫である。 苦笑いを返しながら、ゆっくり背をさすった。 +++++++++ それから、成瀬は宣言通り、毎日篠宮の神社へ行った。 つい苦笑してしまうが、成瀬が悪人ではないことは皆わかっている。 今日も今日とて。 「啓太!」 「わ」 篠宮と、神社の掃除を手伝っていたところ、後ろから抱きつかれる。 ぐりぐりと、そのまま頬ずり。 「寂しかったよ、啓太」 「寂しかったって・・・そんな、一日・・」 「もう啓太が好きすぎて、啓太が居ないと寂しくてたまらないんだ」 「・・・えと・・」 「ねえ、啓太?わかってる?僕は、啓太が本当に好きなんだ」 「はははは・・・」 乾いた笑いをついたててしまう。 成瀬曰く、『一目惚れ』らしい。 一目惚れされた方は、たまったもんじゃない。 ・・のだが、まあ、好かれて悪い気はしない。 「なーるーせーさんっ!!」 「・・・おや。遠藤」 「啓太から離れてください!いつまで引っ付いてるんですかっ」 「そうだな。啓太が、僕のことを好きになってくれるまでかな」 「永遠にありえませんっ!いいから早く離れてくださいっ」 ぎゃーぎゃー騒ぐ声に気づいたのだろう。 篠宮と岩井が、神社の中から出てくる。 「・・またやってるのか?」 「・・・はは・・・。えと、俺のせい・・・かも・・」 「・・・いや、啓太は悪くない」 「それにしても・・・。よく飽きないものだな」 はぁ、と、頭が痛そうに篠宮がため息をつくのを、 啓太が苦笑して眺める。 原因が思い切り自分にあるような気がして、思い切り笑えない。 それにしても、と、啓太が空を仰いだ。 自分は西園寺の子供で。 あの世界の中が、一番居心地の良い世界なんだと、小さい頃は信じていた。 それなのに、どうもこちらの方が居心地が良い。 西園寺の家が、居心地が悪いわけではない。 西園寺も七条も、本当によくしてくれるから。 だけど・・・。 今度は視線を成瀬と和希の方へ向ける。 だけど、ここには彼が居る。 そう思い、頬を染めた。 ぷるぷると頭を振り、熱を逃がそうと努力する。 「啓太!」 「え、何・・・?」 「啓太は、勿論僕の方が好きだろう?」 「俺の方が付き合いは長いんです!当然、俺の方が好きだよな、啓太!」 「付き合いの長さはこの際関係ないだろう。要は気持ちの問題さ」 「・・はは」 急にこちらに矛先が回ってきて、啓太がまた苦笑いをする。 だけど・・・不思議と、嫌な気分ではない。 さて、それにしてもこの収集を今日はどうつけようか。 そんなことを考えながら、幸せそうに笑った。 ++++++++ Next |