"Love Love Love" 「じゃあ・・・ちょっとだけなら」 「有難う御座います」 何故か感謝され、ちょっと照れくさくなりながら神社の中へ入った。 +++++++++ 「それで?」 出されたお茶に軽く一礼をした後、和希が問いかける。 「・・俺は篠宮絋司。この神社の宮司をしています」 「遠藤和希。職業は・・・まあ、色々」 「・・・色々ってなんだよ」 「色々だよ。こっちは啓太」 和希の挨拶にあわせ、啓太も礼をする。 「こっちは岩井卓人です。一応、絵師の真似事をしている奴でして」 「・・・絵師さん」 「・・岩井卓人・・・。聞いたことあるな・・・」 「有名な人なの?」 「結構な。まだ若い人材ってことで、上からも注目されてる」 「へぇ・・・。すごい人なんだ」 和希の情報に、感心したような声を出して、啓太が寝ている岩井を見る。 「・・・でも、何でそんな人が倒れて・・・?結構売れてる人なのに」 「・・・いや、金は、あるんです。物欲もない奴ですから、余る程」 「じゃあ何で。食べられないわけでもないでしょう?」 「こいつは、絵を描いてる最中は食べるのを忘れるんです・・・。 それで倒れて、何度この神社に運び込まれたことか・・・」 頭が痛いといった感じで、篠宮が頭を抱える。 なるほど。道理で関係なさ気な絵師の名前を知っているわけだ・・・。 「あの・・大変なんですね・・・」 「ああ・・・。こいつは何度言っても人の忠告を聞かないで、 3日4日食べないばかりか、食べたところで握り飯を一個食えば良いほうだし、 倒れるのも当然だと何度も言っているのだが、それを聞くような奴じゃない。 倒れられたらたまらないと俺の家に住まわせているのだが、 水筒を置いても飯を置いても全く手をつけない奴で・・・」 「・・・・えと・・・大変、なんですね・・・」 鬱憤でも溜まっていたのかもしれない。 啓太はもう、『大変なんですね』という感想しか出てこなかった。 「わかってくれるか」 よほど大変らしい。 お茶と添えられた菓子を頂きながら、つらつらと連ねられる愚痴を聞いていると。 不意に、岩井が動く。 「・・・・う・・・」 「それで・・・・・。・・・卓人、起きたのか?」 「・・・・ああ・・・・」 頭に手を添えて、軽く頭を左右に振る。 ぼんやりとした瞳が、啓太と和希を捕らえる。 「・・・篠宮・・・。彼等は?」 「今回お前を助けてくれた人達だ」 「・・ああ・・。・・・すまなかった。迷惑をかけて・・」 頭を下げられ、啓太が慌てる。 「そんな!困ったときは、お互い様ですから」 「だが・・・」 「・・そうだよ、啓太。また倒れられたら大変だろ?」 「でも・・」 「でも、じゃない。こういうことはちゃんとやっておかないとダメなんだ」 「ああ。その通りだ。卓人、これで何度目か覚えているか?」 「・・・いや・・・その・・」 「大体啓太はお人よしすぎるんだよ」 「こういう運んでくれる人が居なければ、お前は死んでるかもしれないんだぞ。 わかっているのか?」 啓太は和希に、岩井は篠宮に叱られ、 何だか妙な展開になったと、啓太と岩井が視線を交わす。 「聞いてるのか、啓太」 「聞いてるってば」 「卓人もだ。大体、毎回毎回人の話を聞き流して・・」 「・・ああ・・・済まない」 いつまで続くんだろうかなぁ、と。 啓太と岩井が、示し合わせたわけでもないのに、同時にため息をついた。 NEXT |