"Love Love Love"





「じゃあ・・・ちょっとだけなら」

「有難う御座います」



何故か感謝され、ちょっと照れくさくなりながら神社の中へ入った。






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「それで?」



出されたお茶に軽く一礼をした後、和希が問いかける。



「・・俺は篠宮絋司。この神社の宮司をしています」

「遠藤和希。職業は・・・まあ、色々」

「・・・色々ってなんだよ」

「色々だよ。こっちは啓太」



和希の挨拶にあわせ、啓太も礼をする。



「こっちは岩井卓人です。一応、絵師の真似事をしている奴でして」

「・・・絵師さん」

「・・岩井卓人・・・。聞いたことあるな・・・」

「有名な人なの?」

「結構な。まだ若い人材ってことで、上からも注目されてる」

「へぇ・・・。すごい人なんだ」



和希の情報に、感心したような声を出して、啓太が寝ている岩井を見る。



「・・・でも、何でそんな人が倒れて・・・?結構売れてる人なのに」

「・・・いや、金は、あるんです。物欲もない奴ですから、余る程」

「じゃあ何で。食べられないわけでもないでしょう?」

「こいつは、絵を描いてる最中は食べるのを忘れるんです・・・。

それで倒れて、何度この神社に運び込まれたことか・・・」



頭が痛いといった感じで、篠宮が頭を抱える。

なるほど。道理で関係なさ気な絵師の名前を知っているわけだ・・・。



「あの・・大変なんですね・・・」

「ああ・・・。こいつは何度言っても人の忠告を聞かないで、

3日4日食べないばかりか、食べたところで握り飯を一個食えば良いほうだし、

倒れるのも当然だと何度も言っているのだが、それを聞くような奴じゃない。

倒れられたらたまらないと俺の家に住まわせているのだが、

水筒を置いても飯を置いても全く手をつけない奴で・・・」

「・・・・えと・・・大変、なんですね・・・」



鬱憤でも溜まっていたのかもしれない。

啓太はもう、『大変なんですね』という感想しか出てこなかった。



「わかってくれるか」



よほど大変らしい。

お茶と添えられた菓子を頂きながら、つらつらと連ねられる愚痴を聞いていると。

不意に、岩井が動く。



「・・・・う・・・」

「それで・・・・・。・・・卓人、起きたのか?」

「・・・・ああ・・・・」



頭に手を添えて、軽く頭を左右に振る。

ぼんやりとした瞳が、啓太と和希を捕らえる。



「・・・篠宮・・・。彼等は?」

「今回お前を助けてくれた人達だ」

「・・ああ・・。・・・すまなかった。迷惑をかけて・・」



頭を下げられ、啓太が慌てる。



「そんな!困ったときは、お互い様ですから」

「だが・・・」

「・・そうだよ、啓太。また倒れられたら大変だろ?」

「でも・・」

「でも、じゃない。こういうことはちゃんとやっておかないとダメなんだ」

「ああ。その通りだ。卓人、これで何度目か覚えているか?」

「・・・いや・・・その・・」

「大体啓太はお人よしすぎるんだよ」

「こういう運んでくれる人が居なければ、お前は死んでるかもしれないんだぞ。

わかっているのか?」



啓太は和希に、岩井は篠宮に叱られ、

何だか妙な展開になったと、啓太と岩井が視線を交わす。



「聞いてるのか、啓太」

「聞いてるってば」

「卓人もだ。大体、毎回毎回人の話を聞き流して・・」

「・・ああ・・・済まない」



いつまで続くんだろうかなぁ、と。

啓太と岩井が、示し合わせたわけでもないのに、同時にため息をついた。





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