"Love Love Love"
〜丹羽ED〜








「よーっす、啓太」



啓太が女ではない、とわかってからは、御簾を開くことに抵抗を感じなくなった丹羽だ。

西園寺の注意も何のその。

暇を見つけては、啓太の部屋へ遊びにいっている。

それを啓太が喜んでいるのだから、西園寺も強くは言えない。



「王様!」



啓太は啓太で、唐突に御簾を上げられても、喜んでいる。

例えば、犬のような尻尾があれば、多分ぶんぶん振ったくられているだろう。

啓太にはそんな愛嬌がある。



ちなみに、王様とは丹羽の称である。

当然、自称、だが、他称でもある。

何でも、王様とは、帝と同等の地位を持つ人物の総称らしい。

よく知らないが。

だが、丹羽家は確かに西園寺家と並び、帝へと口出し出来る権限を持っている。

よって、『王様』と、丹羽家の跡継ぎは代々呼ばれているらしい。

ちなみに、丹羽家と並ぶ西園寺家は代々『女王様』と他称されているのだが、

男として生まれたのに女王様では流石に嬉しくなく、自称はしていない。



「お前、まぁた本読んでんのか?」

「はい。西園寺さんがくれたので。読みますか?」

「俺ぁパス。書類は中嶋専門」

「じゃあ、王様は?」

「俺は体を動かす方だな」

「へぇ。なんか、格好良いですね」

「そうか?」



どっかりと、丹羽が啓太の隣に腰を降ろした。



「はい。俺、外へあんまり行かないから。すごく格好良いと思います!」



そこまで褒められて、悪い気はしない。

しかも相手は啓太だ。

純粋な気持ちの塊で、全く嫌味なく褒めてくる。

これはもう、純粋に嬉しいという気持ちしか湧くまい。



「・・だー、もう」



『ありがとよ』と、まあ簡単に流せる性格ならば良かったのだが、それは丹羽。

照れ隠しのように、頭をわしわしとかいた。



ふいに、また御簾があがる。



「そんなに良い物じゃないぞ、啓太」

「中嶋・・」

「中嶋さん」



最初は苦手意識を持っていた中嶋だが、話してみればそう悪い人でもない。

それに、色んな話題を持っているので、退屈している啓太にしてみれば面白い人だ。

とはいえ、陰陽師とは得てして一般人の知らないことを知っている者ではあるから、

中嶋だから・・とはいえないのかもしれないが。



「どうしたんですか?今日は」

「そこのデカブツを取りに来た。公務だ、丹羽」

「王様、また逃げて来ちゃったんですか・・?」



丹羽が公務をサボることは、すでに日常茶飯事らしい。

ただ、啓太が現れたことにより、丹羽の逃げ場が大抵、啓太の部屋になっている。

・・・となれば、丹羽に仕事をやらせるのは、簡単。



持っていた書を取り出す。



「今日・明日中に仕上げなければならない書類だ」

「おい、中嶋・・」

「別に啓太ならば見せても構わないだろう。国家機密レベルのものでもなんでもない。

それに、啓太は話す相手もいないだろうし、西園寺たちはこの内容を知っている。

ここでやることに対して、何か文句でもあるのか?」

「・・・や・・・文句はねぇけどよ・・・」



照れ隠しではなく、困ったときのくせで頭をかく。

隣で啓太が、『王様。頑張ってください』と言っているから余計に困る。

憎からず思っている啓太に言われてしまえば、頑張らざるをえないではないか。



「・・・わーったよ」



観念する。

全く、やり辛いったらない。

ここに逃げてくれば中嶋には確実に見つかるし、仕事をやらざるをえなくなるし、

やっている最中啓太にずーっと見られているし。



(・・だけど、どーしても足がこっち向くんだよなぁー・・・)



一人愚痴る。

やりにくいったらありゃしない。

だけど、少々羨望の混じった啓太の視線を浴びるのは、それほど嫌なことでもなく。



(確かに、美姫っちゃ美姫か・・・。姫じゃなくて皇子な所が唯一の難点だよな・・・)



適当に書類を眺めながら、そんなことを考える。



丹羽がそんなことを考えてるなんて露知らず。

ただ淡々と仕事を進める丹羽を前に、『本当に格好良いなぁ・・』と、

啓太は一人ため息をつく。

憧れ。羨望。もしくは、それを超えた何か。

それが、胸の奥の方でくすぶっている。

もう一つ、熱くなった頬の熱を冷ますようにため息。

啓太にとって、仕事中の丹羽を見ることは、一種の幸せだったりした。





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