"Love Love Love" 「何だか凄い人だったなぁ・・」 自室へ戻り、ほうとため息をついて、一日を思い出す。 自分には、どっちかといえば篠宮や岩井のような、 のんびりとした暮らしの方が似合っているかもしれない。 (西園寺さんより豪華な人、初めて見た・・・) 世界が狭いといえばそれまでだが、西園寺も豪華な方だと思っていた。 だが、成瀬と名乗る男はそれより遥かに華美な男で。 金の髪なんて始めて見た。 やっぱり、世界は広いのかもしれない。 「啓太君。起きてますか?」 唐突にかけられた言葉。 慌てて姿勢を正す。 「はい!大丈夫です!」 「そうですか?」 「はい」 そういえば、七条一人なのかな、と啓太が首をかしげた。 西園寺の気配が感じられない。 「七条さん、西園寺さんは・・・?」 「・・・そのことについて、少しお話をしてもよろしいですか?」 「・・・お話・・・ですか?」 「はい。すぐに郁も来ます。郁も交えての話となります」 「・・・はあ・・・」 何だか固い声に、啓太が不安に取り付かれる。 ふっと、七条が微笑む気配がした。 「大丈夫ですよ。僕も郁も、君の嫌がることは望んでいませんから」 「・・・はい」 +++++++++ 啓太の部屋へ西園寺と七条を招き入れる。 部屋は、なんとなく固い雰囲気に包まれてしまう。 「・・・結婚・・・ですか・・・?」 西園寺から提案されたことは、それであった。 結婚。 相手は・・・時の帝。 「そんな・・・俺が天皇となんて・・・身分が・・」 「誤解するな、啓太。お前は仮にも西園寺の名を持つ者だ。身分は十分釣り合う」 「そうですよ。ですが、悪いお話ではないはずです。 天皇ですから、ここにいるより不便はありません」 「・・臣。まるで私が不便をさせているように言うな」 「そんなつもりではありませんよ。 でも、 啓太君が西園寺より高い地位と権力をお望みでしたら、とても良い話です」 「でも・・」 「・・・だが、私達はお前を無理に嫁に出すつもりはない。 お前が嫁ぎたいと思えば嫁げば良いし、嫌ならばずっとここにいろ」 「・・・・でも、俺、男だし・・」 「その辺りは、帝も承知の上です」 「・・・・・」 啓太が黙り込む。 帝の、嫁。 それは、とても美味しい話。 本妻でなくとも、その身分を望んでいる女子が、どれだけ居るだろう。 多すぎて、数え切れない程にいるはず。 その中の一人に、運良く当った。 美味しい話、なのに。 だけど・・・ (何でだろう・・・。何だか、悲しい・・・・) ツン、と、鼻に何かが来る。 目が潤みそうになり、慌てる。 「あ、あの、少しだけ・・考えさせてもらっても良いですか?」 「・・ああ、構わない。すぐに決めるには無理な話だろう」 「是か非か、決まりましたら教えてくださいね」 「家のことなど、変なことを考えるな。ただ、お前の望む通りの答えを出せ」 「・・わかりました・・」 すっと立って、二人が立ち去る。 立ち去った後、残るのは当然、啓太一人。 漠然とした不安が、頭に残る。 「・・・どうしよう・・・」 ++++++++++ (・・・篠宮さんなら、助けてくれるかな・・・) (岩井さんなら、相談に乗ってくれるかも) |