"Love Love Love"







(お茶なんて飲んでたら・・・西園寺さん達、帰ってきちゃうよな・・・)



何せ、内緒で外に出ている身である。

バレたら、兄に何を言われるかわかったものではない。

外を見れば、男を運ぶのに時間を要したためか、随分と陽が傾いている。



「え、嘘!」



予想したよりも陽が傾いており、流石に啓太も焦る。



「どうした、啓太?」

「俺、帰らないと!」



道は何とか覚えているが、屋敷とは反対の方である。

急いで帰って、果たして間に合うかどうか・・。

だが、今は考えている時間すら惜しい。



「あの、すいません。俺はこれで。和希、お願い。この人見てあげて?」

「え、おい。啓太?」

「ごめん、和希!じゃあ」



ペコリ、と宮仕に頭を下げ、

和希の静止も聞かずに走り出した。

やっぱり軽い服は良い。いくらでも走れるから。

西園寺が屋敷に戻っていないことを本気で心から祈りつつ、

啓太は全速力で走って行った。






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まだ帰ってきていないことに安心し、

そっと御簾の中へ入って、身体に泥がついていないかを確認し、手近な本をとった。

本を読んでいた、と思わせるためである。

それに、啓太は案外本を読むことが好きだった。

勉強が好きだとは思わない。

思わない、が、新しい知識を吸収するのは面白いことだと思う。

それを覚えるかどうかは別として。

西園寺と七条のおかげで、常に新しい本が部屋にある状態だ。

読んで損はないだろうと、ぺらりとページをめくる。





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しん、とした部屋。

時折、早いペースではないがページをめくる音が響く。

ふいに響いてきた、足音。



「・・・え・・?」



公務から戻る頃合であるから、足音がするのは構わないのだが・・・。

なんとなく足音が荒い気もする。

だが、ここに来るのは、七条と西園寺しか居ないはず。



「・・・なんでこんなに足音が荒いんだろう・・・」



啓太が首をかしげても、

答える人物がいるわけもない。









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「・・・もしかして、急ぎの用・・・なのかな・・・」



「・・・もしかして、西園寺さん達じゃない・・のかな・・」










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