"Love Love Love" (お茶なんて飲んでたら・・・西園寺さん達、帰ってきちゃうよな・・・) 何せ、内緒で外に出ている身である。 バレたら、兄に何を言われるかわかったものではない。 外を見れば、男を運ぶのに時間を要したためか、随分と陽が傾いている。 「え、嘘!」 予想したよりも陽が傾いており、流石に啓太も焦る。 「どうした、啓太?」 「俺、帰らないと!」 道は何とか覚えているが、屋敷とは反対の方である。 急いで帰って、果たして間に合うかどうか・・。 だが、今は考えている時間すら惜しい。 「あの、すいません。俺はこれで。和希、お願い。この人見てあげて?」 「え、おい。啓太?」 「ごめん、和希!じゃあ」 ペコリ、と宮仕に頭を下げ、 和希の静止も聞かずに走り出した。 やっぱり軽い服は良い。いくらでも走れるから。 西園寺が屋敷に戻っていないことを本気で心から祈りつつ、 啓太は全速力で走って行った。 +++++ まだ帰ってきていないことに安心し、 そっと御簾の中へ入って、身体に泥がついていないかを確認し、手近な本をとった。 本を読んでいた、と思わせるためである。 それに、啓太は案外本を読むことが好きだった。 勉強が好きだとは思わない。 思わない、が、新しい知識を吸収するのは面白いことだと思う。 それを覚えるかどうかは別として。 西園寺と七条のおかげで、常に新しい本が部屋にある状態だ。 読んで損はないだろうと、ぺらりとページをめくる。 ++++++++++ しん、とした部屋。 時折、早いペースではないがページをめくる音が響く。 ふいに響いてきた、足音。 「・・・え・・?」 公務から戻る頃合であるから、足音がするのは構わないのだが・・・。 なんとなく足音が荒い気もする。 だが、ここに来るのは、七条と西園寺しか居ないはず。 「・・・なんでこんなに足音が荒いんだろう・・・」 啓太が首をかしげても、 答える人物がいるわけもない。 +++++++++++ 「・・・もしかして、急ぎの用・・・なのかな・・・」 「・・・もしかして、西園寺さん達じゃない・・のかな・・」 |