"Love Love Love" 〜西園寺ED〜 思わず、縋るように瞳を見る。 綺麗な目。 碧色の、宝玉のよう。 「・・・西園寺さん・・・俺・・・」 名を呼べば、 白い、細い腕が、啓太に向かって伸ばされてきて。 そっと、頬へ寄せられた。 「そんなに泣きそうな顔をするな、啓太」 「でも・・」 「お前が嫌なら、無理強いはしないと言っただろう?」 柔らかく、西園寺が微笑む。 ゆったりと、白い手が頬を滑る。 何度も、何度も。 落ち着かせるように。 「ここにいたいか?啓太」 こくり、と。 声が出ずに、頷く。 「よく言った、啓太。・・・・臣」 「はい。帝へは僕が話を通しておきます」 きょとんと啓太が七条を見ると、 『簡単ですよ』と七条が笑う。 「やり方は、ナイショですけどね」 「はぁ・・」 「僕を信じてください。啓太君」 七条の、信頼を得るような言葉に、西園寺が睨む。 それを笑顔でかわせるのは、きっと七条くらいなものだ。 「それでは、行って来ます。郁も」 「ああ。じゃあ、啓太。すぐに戻ってくる」 「あ・・・はい」 しゅるりと衣の音をさせ、二人が立ち上がる。 それは、大人の姿だった。 ほわりと、意味もなく啓太の頬が染まる。 「待っていろ」 「はい」 くしゃりと、髪が撫でられ、嬉しくなる。 大丈夫。 根拠もないのに、そんなことを思った。 ++++++++ こんなのは、可笑しい。 可笑しいのだ。 男色が珍しくはないといったところで、 兄弟間では可笑しい。 だけど、さっき認識した思い。 (俺は・・・西園寺さんが好き・・・) はぁと、啓太の睫毛が頬に影を落とす。 「・・・」 西園寺家の、娘と称された息子。 美姫と称されているが、平凡な、男。 男として、武将になることも出来ず、名を上げることも出来ない。 女として、他家へ嫁ぐことも出来ず、親族を増やす事も出来ない。 役立たずの、足手まとい。 それなのに、魔に魅入られやすいという体質から、七条まで雇ってもらい。 どうしようもない。 「・・・はぁ・・」 本当の美姫に嫁いで貰い、子を生さなければ、西園寺家はここで途切れることになるのに。 己の告げて良い思いではない。 先程の香の香りを意識して嗅ぎ、気を落ち着かせる。 もくりと煙が立ち昇る。 落ち着く。 慣れている香りに。 「はぁ・・・」 何とか、何とかしないと。 この思いを、何とか切り捨てないと。 じゃないと、本気で西園寺家の足手まといになってしまうのだから。 NEXT |